パッシブデザインな中庭を創造する
蓼科高原の週末の家は、内と外との一体感が重要でした。
その室内の床材は無垢の厚いデッキ材のレッドシダーを加工してフローリングを作りました。ただこれだけで杉の柔らかさ(多孔質)を活かしてほんのり床が暖かいです。
この蓼科高原では標高が高いので、夏の夜でも暖房も必要なくらいです。この杉材は柔らかいという特性で、保温性や調湿性に優れます。
床材としては傷は付きやすいですが、使い方しだいでは体感的に暖かく温もりのある自然素材です。杉材は週末住宅や別荘にはもってこいの素材だと思います。
このような素材の選択もパッシブデザインのひとつです。最近、事務所を移転しましたが、その改装時の断熱に遮熱材のリフレクティックスを使ってみました。
結果は、鉄骨ALCのペントハウスの暑くてたまらない空間が、ほんの小さなエアコンだけで真夏を乗り越せ、真冬も大きな開口部からの冬の日差しが入るおかげで暖かいです。まさにダイレクトゲインです。
いちど暖まった部屋はいがいと冷めにくく、逆に夏は冷えた室内空間は、翌日までひんやり感が残っています。ちなみに20坪の空間の夏の電気代がわずか、3000円/月UP程度だったことには驚きでした。
当然のことですが Low-Eのペアガラスは必要です。できる事から始めた改装工事ですが、遮熱材の選択によってエネルギーロスを抑えたこともパッシブデザインのひとつです。
パッシブとは、自分からは積極的に働きかけないさま。受動的。その逆のアクティブとは、自分から進んで働きかけるさまで、活動的、積極的です。システムだけに頼るアクティブな方法だけでなく、身の回りから出来る事をする考えです。
自然が持っているエネルギーを無理なく引き出して、家づくりをしていけばよいのではないでしょうか。
環境問題をよく耳にしますが、とくに日本では建築寿命は短命だと思います。コンクリート造にしても木造でも、ほんの数十年で解体して建て直せばよいという考えが浸透し、住宅ではローンが終わるほんの20数年で建て直されるサイクルです。
リフォームやリノベイトで再生して長く使い続けていくことは、サスティナブル建築の考えです。改修を続けながら建物の躯体の寿命を長持ちさせれば、解体や建て直す時に必要な多くのエネルギーが削減できます。
設備や断熱の性能は進化しいくので入れ替える必要はありますが、サスティナブル建築とは、これらのエネルギーを抑え、持続可能な建築として、環境に対する負荷を少しでも減らそうとする考え方です。
ただ、ゼロエネルギーを目指すために、気密性の良いFixガラスを多用してエネルギーのロスを少なくする建築は分るのですが、何か息がつまりそうですね。時には、大きく開けて家も思いっきり呼吸ができるような家づくり、風を感じるデザインはパッシブデザインの考え方だと思います。
京町屋の中庭と坪庭の関係で派生する上昇気流で風の流れを作る考えや、風のデザインをうまく利用している建物としては、聴竹居、ハイデラバードの街の採風塔のデザインなどは、いいパッシブデザインの参考例です。*パキスタンの南部に位置するハイデラバードは砂漠気候帯に属します。夏の日中は40℃を超える酷暑ですが、夕方には涼しい風が一方向から吹きます。採風塔はそうした涼風を取り入れる自然の空調機です。
風土に根ざした長年の生活の中で、快適さを求めた人間の知恵から形値づくられました。「ハワ・ダン」と呼ぶ換気装置で、内部は吹き抜けの中庭になっています。採風塔の上部には、風に向かって帆を張るように屋根が架かり、そのドラフト効果によって風が下から上に抜ける仕組みです。