建築のフレキシビリティの可能性
日本とスイスの建築の考え方の違いは興味深いです。
日本では、低金利で銀行から融資を受けて、20〜30年の返済でローンが終われば自分の家になります。
ただこの返済が終わる頃には建物の価値は無くなっていて、機能的にも設備も古くなっている場合が日本の住宅の現状だと思います。
そのためローン返済の頃には建物に再度リフォームなどの費用をかける場合が多いです。一方、スイスの建築は、時間的耐久性のある建て方をするので、建物を不動産として取り扱います。
50年間はメンテナンスフリーの建物をお金をかけて作るので、転売がしやすく購入時と同じ金額で建物が売れます。
支払いは日本と比べて自分が借り入れ出来る金額のおおよそ倍の金額を、銀行が融資して建築家の監理のもとで、100年間は持つしっかりした家を建てます。
そのため、50年後に売却する場合に購入時の金額で売れるので、毎月の支払いは実質銀行に対して金利のみの返済ですむ考え方です。
コンクリートがもって100年だから基礎にコンクリートを使うのであれば、100年住宅はいいと思いますが、スイスのようなシステムが出来ていて、50年間はメンテナンスフリーで、これをするにはそれなりに費用は必要です。
また、200年住宅もありますが、工法など工夫しないと難しいと思います。また200年後といえば今からいえば江戸時代まで遡る期間です。今後の200年後の建築の状況なんて今の情報社会のスピードの変化を考えたら、先を見越して建てることはほとんど無意味なような気がします。
よほどフレキシビリティに対応していかないと、ほぼ役立たずになります。これからの100年後の建築だってどのように生活スタイルが大きく変化していくのか分かりません。
ミース・ファン・デル・ローエによって提唱された、無限定に広がる均質空間の「ユニヴァーサル・スペース」ぐらいのものでないと、順応していけないように考えます。
このフレキシビリティとは、一般的には変化に対する柔軟性や融通性を意味します。建築においては、用途や機能の変化、増築や改修、間取りの変化などに対応可能な建物の性質のことです。
またミースによって提唱された、ユニヴァーサル・スペースとは、床および天井と、最小限の柱と壁で構成されるさまざまな用途にも対応できる空間で、必要に応じて、間仕切りや家具を配置することが出来るフレキシブルな空間のことです。
空間の使い方は利用者に任されるべきで、建築により規定するべきではないとの考えです。ミースの最も有名な言葉「Less is more」が、これらの全てを象徴しています。
このようにフレキシブルに対応できる家づくり、いろいろな可変性をもったシステムづくりこそが、末永く使っていける可能性のある建築だと思います。これからの持続可能な建築を作るうえで、このフレキシビリティがもっている可能性はとても大切なことです。