魅力ある景観づくりには
私の好きな著書のひとつ、『人間のための街路』(B・ルドフスキー著)では街路空間の魅力を語っています。
イタリアのボローニャのポルティコの総延長は何と38Kmもあります、ベネチアの車のない街路空間とゴンドラ、その運河の総延長は45kmもあります。
モロッコのフェズの迷路のような街路空間、南イタリアの真っ白の街路空間などなど。それに比べ日本の街づくりには魅力度がありません。
単独の小さな家づくりの、ファサードだけでそれぞれが自己主張しているようで、意味や存在感に少なさを感じます。街全体で語りかけてくるような何かが必要だと思います。街路空間がある魅力的な街づくりが出来ればと考えています。
日本の建築協定にしてもやろうとしていることは、空地を作って防災や緑化、勾配屋根、外壁面の配色などが一般的ですが、はたしてこのようなことだけで魅力的な住空間はできるのでしょうか。
建築協定などもうまく取り決めて行なえば、小さな集落の様に街全体を統一感あるデザインができるかもしれません。
街路空間も含めた、住空間のデザインの取り組みが出来れば魅力的な、街区でのデザインも可能だと思います。ただ、表面的な緑化率や壁面後退などのものだけではなく、魅力的な街路空間や広場があれば緑は必ずしも必要ないと思います。
イタリアの街の魅力は、その街路空間や広場の空間にあります。特に山岳地帯や丘陵地域に魅力的な街が多いのですが、階段状の街路、傾斜のある坂道、ヒューマンなスケールの魅力ある街路空間があれば緑は必ずしも必要ないことに気づきます。
街ごとにアイデンティティのある街づくりが必要だと思います。日本の街はどこに行っても単調で同じようなつくりに変化しています。過去の日本の都市空間の魅力がどんどん消滅しています。
特に新興住宅街ではハウスメーカーの家がずらりと並んでいっているのが現状で、これではとても魅力のある街づくりとはいえがたいです。その土地にある素材やちょっとした工法などを引き出して、その街のデザインモチーフを作り、その街での統一感ある魅力的な何かをつくり出していかねばならないです。
ただ、だれがそのモチーフを選出して、それを取り決めていくかが重要です。
むずかしいテーマとなりますが、これも役所が決定してしまうのではなく、その土地の建築家を含めた街づくりのグループで、その地元での相応しい建築協定のようなものが出来れば、ただ単一な街となっていってしまう事を防げれるように思います。
既成概念や建築基準法だけにとらわれずに、特例的な建築協定などを作りながら、思い切った街づくりへと法改正も必要だと思います。建築家だけではなく、都市計画家、アーティスト、地元住民やお役所も取り込んで建築基準法だけではない、意匠を主観的に整備していく街づくり協議会などをどの街においても義務化するくらいの柔軟な意識の改革をしないかぎり、日本の街の景観は良くなっていかないと思います。
イタリアのローマでは、市長は歴史家だと聞きました。この意識の違いが日本の景観との大きな差なのでしょうね。